症例紹介
- 画像診断はすべて全身麻酔下での検査です。
- 鑑別診断や病状の把握の精度はMRI・CT撮影がベストです。手術が必要な患者さんは当院に入院後、MRI・CT撮影施設に移動して検査を行います。
- 当院内でできる検査は脊髄造影レントゲン撮影検査です。経済的な理由、もしくは飼い主様のご希望でMRI・CT撮影をしない場合に手術に先駆けて行う検査が脊髄造影レントゲン検査です。(診断率90%以上)
-
斜め外側から
-
靭帯をめくって膝蓋骨と滑車溝を露出させたところ
- 運動管理、体型管理
- 消炎鎮痛剤
- サプリメント
- 造溝術
- 外側関節包縫縮
- 頚骨粗面転移術
- 骨切り矯正術
- 運動管理、体型管理
- 消炎鎮痛剤
- サプリメント
- 大腿骨頭切除術(切除関節形成術)
- 三点骨切り術
- 股関節全置換術
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スケーリング前
-
スケーリング・ポリッシング後
- 歯茎の痛みでご飯が食べづらい。
- 歯の根元に膿が貯まる。
- 顎の骨が溶ける。 等
-
ポリッシングの様子
機械に研磨剤をつけて歯の表面を磨いています -
前から
-
横から
-
下の歯を切った後の写真
上の歯も異なる方向に伸び過ぎているのがわかります。 -
上の歯も切った後の写真
正常の形に近づきました。ご飯が食べ易くなります。 -
フレンチブルドッグ、♂、6か月
丘疹、毛包炎、細菌の二次感染あり
痒みあり:舐めている。 -
シーズー、♂、13才
指間湿疹、細菌の二次感染あり
痒みあり:舐めている。 - 多飲多尿
- 食欲増進
- 体重の低下
- 全体的に毛が薄くなる。
- 左右対称に毛が抜ける。
- お腹が膨れる。
- 無気力、動きたがらない。
- 皮膚が薄くなったり、黒ずんだり脂っぽくなる。
- 糖尿病、甲状腺機能低下症を併発することがある。
- 血液検査(ACTH刺激試験)
- エコー…副腎
- CT、MRI…脳下垂体
- 食欲増進
- 落ち着きがなくなる。…夜鳴きしてウロウロする等
- 体重の低下
- 多飲多尿
- 嘔吐
- 下痢
- 高体温
- 呼吸が早くなる。
- 興奮しやすい。
- 不整脈や心筋症を併発することがある。
- 進行すると食欲の減退、衰弱がみられる。
- 血液検査…甲状腺機能検査として血中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの値を測定。
- レントゲン
- 血圧
- 心電図検査
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非腫瘍性
- 皮膚病変
- 乳腺炎
-
腫瘍性
-
乳腺腫瘍
- 良性
- 悪性
- 炎症性乳癌
-
その他の腫瘍(たまたま乳房にできた他の腫瘍)
- 良性
- 悪性
-
乳腺腫瘍
- 腫瘍のみの切除
- 単一乳腺切除術
- 部分乳腺切除術(第1~3乳腺、第3~5乳腺など)
- 片側全乳腺切除術
- 両側全乳腺切除術
- 片側乳腺切除術+両側全乳腺切除術の併用
- 抗癌剤(明らかに効果のある治療法は確立されていない。)
- 放射線療法(効果は明らかにされていない。)
- ホルモン療法(女性ホルモンとの関連がある腫瘍なので試みられているが、今のところ有用な治療法は確立されていない。)
神経疾患
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは
背骨(椎骨)と背骨(椎骨)の間の椎間板物質が突出(ヘルニア)を起こし、脊髄が圧迫されて痛みや麻痺(ふらつき、下半身不随、排尿障害など)が起こる病気です。
胸腰椎での椎間板ヘルニアの重症度分類
グレード | 症状 | 内科療法 | 手術 |
---|---|---|---|
1 | 腰の痛み、小さな段差でもつまずく・越えたがらない。 | ◎ | ◎ |
2 | 歩行可能、ふらつく、姿勢反応の低下 | ◎ | ◎ |
3 | 歩行不能、随意運動(+) | 〇 | ◎ |
4 | 歩行不能、随意運動(-)、深部痛覚(+) | × | ◎ |
5 | 歩行不能、随意運動(-)、深部痛覚(-) | × | 〇 |
脊髄軟化症 | 脊髄の麻痺の範囲が徐々に広がり死に至ります。罹患率:グレード5のうちの7% | × | × |
※随意運動(+/-)というのは自分の意志で後ろ足を動かせるかどうかのことです。
グレード1・2は「内科療法」を試みます。
内科療法
絶対安静が基本。
注射や飲み薬では突き出てしまった椎間板物質を取り除くことはできません。
注射や飲み薬は、痛みと脊髄周辺の炎症を抑える為に消炎鎮痛剤などを使います。
※もしグレード1や2であっても、腰の痛みがひどいなど内科療法が奏功しない場合は手術の対象となることもあります。
グレード3・4・5は「手術」の適応です。
※グレード3・4・5では、一生歩けなくなるリスクを考えると基本的には手術が奨められます。
手術
さまざまな手術方法があります。当院では片側椎弓切除術をおこなっております。
片側椎弓切除術
背骨の一部にマイクロエンジンを用いて穴を開けて、その穴から突き出てしまった椎間板物質を取り除く手術方法です。(写真参照)
手術に先立って椎間板ヘルニアの確定診断と場所の特定のための検査が必要です。
検査
神経学的検査:皮膚や足の感覚や反射、脳神経の異常などがないか精査します。診断をすすめていく上で非常に重要な検査です。
画像診断:
脊髄造影レントゲン撮影
CT撮影
MRI撮影
神経学的検査と画像診断をあわせて、「椎間板ヘルニアであるかどうか?」、「グレードがいくつであるか?」「どの背骨とどの背骨の間のヘルニアなのか?」を特定して手術に臨みます。
整形疾患
骨折
動物の骨折
動物の骨折では人のように患部を動かさずにおとなしくしていることは不可能なので、手術が必要なものがほとんどです。
骨折の治療・手術方法
骨折した部位や折れ方によって選択する手術法は異なります。
プレート固定法
骨折してずれってしまった骨を元の位置に戻し、医療用の金属製のプレートとスクリューで骨と骨を固定する方法です。
ずれてしまった骨を直接見てしっかりと元の位置に戻し強固に固定することができるのがメリットです。
創外固定法
メスを使って切り開くというのを最小限にとどめ、皮膚の外からピンを骨に捻じ込んで固定する方法です。
粉砕骨折や元の位置に戻せない骨折に適しています。
直接骨折の部位をいじらずに済むので、骨を修復するため必要な細胞や血行を維持したまま治せます。
早く治癒できるのがメリットです。
髄内ピン
骨の中心には骨髄といわれるドロドロの液体を満たした空洞があります。
その骨髄内に金属性のピンを入れる方法です。
骨髄ピン単独では不足なので他の固定法の補助として使われることが多い方法です。(ちょうど上の左から2番目のレントゲン写真では創外固定の補助として使用されています。)
膝蓋骨内方脱臼
膝蓋骨内方脱臼とは
膝蓋骨(一般的に『膝のお皿』と言われている骨)が内側に脱臼する病気。
軽度から重度なものまであり、グレードⅠ~Ⅳまでに分類される。
小型犬によく見られる病気。(教科書的にはどの犬種にもまんべんなく起こる病気となっています。都市部で診察している当院では大型犬の絶対数が少ないせいか小型犬でこの病気をよく診断します。)
生まれつき膝蓋骨を内側に引っ張る筋肉の力が強くかかってしまっているのが原因と言われている。
重症例では生まれた直後から、生後6か月~12か月頃まで急激に進行することがある。
ブログも参考にしてください。
膝蓋骨内方脱臼のレントゲン(右後肢)
①矢印が膝蓋骨
②本来ならこれが骨の中央に乗っていないといけません
③膝蓋骨が内側(写真では右側)にはずれているのが分かります
正常な膝の構造(模型)
膝蓋骨内方脱臼の症状
患肢の拳上(3本足で歩く)
重度になると明らかな内股になる
将来の膝関節の炎症につながり易い。(前十字靭帯断裂や損傷、半月板損傷)
Singletonの分類法
グレード | |
---|---|
Ⅰ | 膝関節の伸展時に獣医が指で膝蓋骨を脱臼させることができるが、指を離すとすぐ滑車溝内に戻る。 |
Ⅱ | 膝関節の伸展時に獣医が指で膝蓋骨を容易に脱臼させることができ、指を離してもすぐには滑車溝内に戻らない。頚骨を内転・外転させると容易に膝蓋骨を脱臼・整復できる場合が多い。 |
Ⅲ | 膝蓋骨は常に脱臼しており、獣医が指で整復が可能であるが、指を離すとすぐにまた脱臼してしまう。 |
Ⅳ | 膝蓋骨は常に脱臼しており、獣医が指で滑車溝内に整復するのが不可能である。頚骨の捻れ(ねじれ)など、骨格に形態学的な異常の認められる場合がある。重症例では膝関節の伸展機構が破綻(はたん)しており、膝関節を自力で伸展する事ができない。 |
難しくてよく分かりづらいという方はブログも参考にしてください。
膝蓋骨内方脱臼の治療
内科的治療…グレードⅠ、Ⅱの症例に有効とする報告がある。
外科的治療…基本的にグレードⅢ、Ⅳの症例に適応となる。
※太字…当院で行える治療
股関節形成不全
股関節形成不全とは
成長期の犬に発症する股関節の亜脱臼( しっかりと噛みあっていなくかなり緩い関節の状態 )あるいは 完全脱臼を特徴とする疾患。
軽度から重度の関節炎が発症する。
症状が出始める時期は、仔犬の頃(5~10か月)と5歳以降の成犬が多い。
症状は慢性で進行性である。
股関節形成不全に起因する関節炎のレントゲン像
①寛骨臼(骨盤側の関節の受け皿)
②大腿骨頭(太ももの骨の関節の頭)
③大腿骨頚(太ももの骨の関節の首)
の重度の変形
股関節形成不全の症状
軽度から重度の痛み⇒びっこ、散歩を途中で嫌がる、上る動作を嫌がる、モンローウォーク(お尻を振って歩く)
突然の股関節完全脱臼。
股関節形成不全の治療
内科的治療…約60%の症例に有効とする報告がある。
外科的治療…内科的治療を行っても良好な反応が得られない場合。
※太字…当院で行える治療
口腔内・歯の疾患
歯石
犬・猫では、めったに虫歯にはなりませんが歯周病を抱えている子が大多数です。
歯石は、細菌の育つ温床となり歯肉をむしばみ歯肉炎を起こします。
ひいてはその炎症が骨まで溶かします。骨が細くなり骨折までも起こすことがあります。
ですから、普段のデンタルケアは大切です。
ついた歯石はできるだけ早く取り除きましょう!!
スケーリング(歯石除去)
口臭の原因のほとんどが歯石です。
歯石には無数の細菌がいるために、そのままにしておくと新たな歯周病を引き起こします。
口の中の健康は体全体の健康へとつながります。
口腔内の細菌が傷ついた歯肉の血管から吸収されて、心臓病や糖尿病を引き起こすとも言われています。
定期的な歯石除去(スケーリング)が健康維持に役立ちます。
歯石は歯垢が石灰化することにより硬くなったものです。
超音波を発生する機械を用いてきれいに除去することができます。
スケーリング後に歯石が付きにくくする為にポリッシング(歯の表面の研磨)という処置も行います。
動物のスケーリング・ポリッシングは全身麻酔下で行います。
術前検査をクリアすれば麻酔のリスクは最小限です。
なるべく全身麻酔の機会を減らす為にも、普段からの歯のケア(歯磨きや歯磨き製品の使用)が重要です。
ポリッシング(歯面研磨)
歯の表面にできた傷を平らに磨き上げ、再び歯石がつきにくくします。
荒削り用⇒仕上げ用の順で、2種類の研磨剤で歯の表面をつるつるにします。
歯肉炎
歯肉炎とは
炎症が歯肉のみで骨までいってないものをさします。
軽度(歯肉が退行していないもの)…治療により完治させることができます。
中等度~重度…治療により進行を食い止めることができます。
歯肉炎の治療
スケーリング…目に見える部分の歯石を除去する処置。
ルートプレーニング…歯周ポケット(歯と歯茎の間にできてしまった空間)の歯石を除去する処置。
キュレッタージ…歯から剥がれてしまった歯肉の内側の面を削り、再び歯と接着させる為に行われる処置。
猫の口内炎
猫の口内炎とは
重度になるとご飯が食べれなくなるほど口の中全体が痛くなる場合がある難治性の炎症です。
重度の猫の口内炎の写真
炎症により粘膜がただれて容易に出血を起こしてしまいます。少しご飯が触れるだけでも激しい痛みがあります。
猫の口内炎の治療
内科療法
抗生物質、ステロイド、NSAIDS(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、インターフェロン、サプリメント(ラクトフェリンなど)
内服は痛がるので主に注射で行います。
注射が効いてるうちは少しましになりますが、少しずつ注射の効きが悪くなり全体的には悪化していきます。
外科療法
全臼歯抜歯(奥歯すべての抜歯)…8割近くの症例に有効
全抜歯(奥歯+きば+前歯すべての抜歯)…9割5分近くの症例に有効
全抜歯一週間後の写真
炎症が綺麗に引いています。
痛みも取れて同居猫のご飯も奪ってしまうほど食べれるようになりました。
猫の口内炎の原因
カリシウィルス、猫エイズウィルス、猫白血病ウィルス、歯周炎、免疫の関与などが言われています。
調べても原因がはっきりしないことも多いです。
6割ほどはカリシウィルスの関与があるというデーターもあるので、ワクチン接種は有効な予防法と思われます。
ウサギの歯切り(切歯)
ウサギの歯切り(切歯=前歯)
ウサギの歯は常生歯といって常に生え続けます。
切歯の不正咬合により、歯が異なる方向に伸び過ぎると定期的に病院で切る処置が必要です。
牧草を食べる量が不足してるウサギに多い状態です。
ウサギの不正咬合(切歯)の治療
特殊な器具を使って切ります。
2週間に一回が理想的です。
ウサギの不正咬合の予防
しっかりした量の牧草(チモシー)を食べさせる。
ペレットの量は少なめで、牧草をしっかりと食べさせることで正常な歯の摩耗を保つ。
牧草を食べる時の『 すりつぶし 』動作で歯が摩耗され、伸び過ぎを防ぐ。
※牧草(チモシー)を食べることは、胃腸の蠕動運動も促し、ウサギの胃腸停滞症候群(突然の食欲廃絶)をも防ぐことに役立ちます。
皮膚の疾患
毛包虫症
毛包虫症とは
ニキビダニ、アカラス、デモデックスなどいろいろな呼び名があります。
顕微鏡でないと見えないくらい小さいダニが毛包に寄生する病気です。
犬ではしばしば、猫ではまれ。
びらん、丘疹、鱗屑(フケ)、脂漏症など症状は様々です。
免疫力の下がった(低い)動物で、ニキビダニは増殖して症状を出します。
すなわち、仔犬や老犬、ホルモン疾患や悪性腫瘍(いわゆる癌)など皮膚の免疫力が下がる病気にかかっている動物で出やすい皮膚病です。
ニキビダニは、少数では病原性は低いのですが、増殖して多数寄生で皮膚にダメージを与えます。
アカラスの顕微鏡写真
体は細長く、ダニの特徴である足が8本であることが分かります。
毛包虫症の症状
脱毛、びらん、丘疹、毛包炎、鱗屑(フケ)、痂皮(かさぶた)、紅斑などさまざまな皮膚症状。
症状の出る場所は全身さまざま。
痒みが出る場合と痒みが出ない場合があります。
初期は痒みが少なく、細菌の二次感染を伴ってくると痒みが出てくる場合があります。
毛包虫症の治療
ニキビダニの駆虫
注射:週に一回…基本となる治療(生後間もない頃は全身への弊害を考え避ける場合があります。)
外用剤(塗り薬):毎日…病変が狭い場合
薬浴:週に一回…病変が広くて重度な場合
シャンプー療法
殺菌性のシャンプー
毛包の洗浄作用のあるシャンプー
仔猫のカビの感染(皮膚糸状菌症)
仔猫のカビの感染
抵抗力の弱い仔猫の皮膚に水虫の仲間の皮膚糸状菌が感染する皮膚病です。
円形の脱毛が特徴的です。
仔猫で体のあちこちに脱毛が起こるとまずこの病気を疑います。
仔猫のカビの感染の症状
円形の脱毛。
重度の場合、白い痂皮(かさぶた)。
全身に感染する。
通常痒み(かゆみ)はない。
初期は痒みがなく、重度になると痒みが出てくる場合があります。
仔猫のカビの感染の検査
真菌培養
ウッド灯
真菌培養
白い綿状のカビが生えてきて培地が赤く変色すれば皮膚糸状菌であることが分かります。
仔猫のカビの感染の治療
抗真菌薬
シャンプー…毎日、全身に行いカビ(=真菌)の増殖を防ぎます。
外用剤(塗り薬)…脱毛部位へ
内服…肝臓への悪影響を考慮し、仔猫ではなるべく使用を控えます。
※治療の中心はシャンプーです。毎日すれば1~2週間でかなり良くなります。
外耳炎
外耳炎とは
耳の構造は外から外耳→中耳→内耳となっています。
そのうち外耳に起きた炎症の事を外耳炎といいます。
腫れがひどくなると耳の穴が塞がる(ふさがる)ほどの恐い病気です。
また、炎症が内耳まで及ぶと頭が傾いて(斜頸)食欲不振や嘔吐を伴うこともあります。
外耳炎の原因
感染性・寄生性:細菌感染、真菌(カビ)感染、耳ダニの寄生
アレルギー性:食事アレルギー、アトピー
アトピー性皮膚炎による外耳炎
外耳炎の症状
耳をよく掻く。頭を振る。耳垢が多い。耳が腫れる。
外耳炎の治療
※耳洗浄と点耳薬が基本です。
※下記のように、原因によって治療法が違います。
※ですから診察によって原因をはっきりさせることが重要です。
感染性・寄生性の場合
感染性:耳洗浄、点耳薬、内服
寄生性:殺ダニ剤
アレルギー・アトピー性の場合
食事アレルギー:除去食(アレルゲンの入っていない食事)
アトピー:二次的に起こった感染の治療、点耳薬、内服
治療開始一週間後の写真
まだ治療中ですが、全体的に腫れぼったいのが引いてきたのが分かります。
内分泌疾患
犬のクッシング症候群
クッシングとは
副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され、様々な症状が起こる症候群。
犬のクッシング症候群の症状
犬のクッシング症候群の診断
犬のクッシング症候群の原因
1.下垂体クッシング
脳下垂体に腫瘍ができ、副腎皮質を刺激するホルモン(ACTH)が多量に作られ、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が多量に作られる。(約80%)
2.副腎腫瘍性クッシング
副腎皮質に腫瘍ができ、副腎皮質を刺激するホルモン(ACTH)が多量に作られ、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が多量に作られる。(約20%)
3.医原性クッシング
副腎皮質ホルモン(ステロイド)の過剰摂取や、長期間摂取で突然ストップした結果,副作用で起きる。
犬のクッシング症候群の治療
内科療法
飲み薬:トリロスタン、OPDDD
外科療法
血液検査
数週間~数か月毎
犬のクッシング症候群の予防
予防法はありません。早期発見、早期治療が大切です。気になる症状がある時は診察を受けるようにしましょう!
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症とは
のどにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが過剰になりすぎる状態のこと。猫に多く、犬では稀。
甲状腺機能亢進症の症状
甲状腺機能亢進症の診断
甲状腺機能亢進症の原因
甲状腺腫
甲状腺に発生した良性もしくは悪性の腫瘍によって甲状腺ホルモンが過剰に生成されるようになり発症。
甲状腺が病的に肥大する腺腫が98~99%を占め、残りの1~2%が甲状腺癌だと推定されている。
甲状腺機能亢進症の治療
内科療法
1.飲み薬:メルカゾール(抗甲状腺薬剤)の生涯投薬が必要。
2.療法食:甲状腺ホルモンの原料であるヨードを少なくした食餌。
外科療法
腫大した甲状腺を切除。両方切除したら不足する甲状腺ホルモンを補うため生涯ホルモン投与が必要。
血液検査
数週間~数か月毎
甲状腺機能亢進症の予防
予防法はありません。早期発見、早期治療が大切です。気になる症状がある時は診察を受けるようにしましょう!
腫瘍疾患
犬の乳腺腫瘍
犬の乳腺腫瘍とは
乳腺組織に発生する腫瘍で良性と悪性の比率が50%:50%と言われています。
悪性のうちさらに50%(乳腺腫瘍全体の25%)はさらに悪性度が強いものと言われています。
雌犬で最も発生の多い腫瘍です。
避妊手術をしていない5~6歳以上の雌に発生しやすい腫瘍です。4歳以下での発生はまれです。(平均発生年齢は10~11歳です。)
鑑別診断としては乳腺炎や他の組織由来の腫瘍です。
自壊してしまった乳腺腫瘍
犬の乳腺腫瘍の症状
乳腺にしこり(腫瘤)ができる。
写真のように自壊して痛みや匂いを伴うことがあります。
通常はその他の症状はありません。(※末期になると転移によるいろいろな症状が出てくることはあります。)
犬の乳腺腫瘍の鑑別と診断
一言に『オッパイにしこりがある』と言っても乳腺腫瘍とは限りません。他の病気の時もあります。
まずは診察(視診・触診・細胞診など)で下表のどの病気なのか?おおまかな判断をします。
鑑別
最終的にどの病気なのかは手術後の病理組織診断ではっきりします。
診察の結果、乳腺腫瘍の可能性があるとなれば手術による腫瘤の摘出となります。
最終的な診断は、手術により摘出された腫瘤を病理組織検査にかけることにより確定されます。
犬の乳腺腫瘍の治療
手術
その他の治療
猫の乳腺腫瘍①
猫の乳腺腫瘍とは
猫の場合、乳腺腫瘍は残念ながらそのほとんどが悪性です。
転移率や局所再発率が高く、有効な治療法はなるべく早く見つけて、なるべく早く手術で切除することです。
手術する時点で、転移がないのを確認してから手術します。
「術前に転移が発見される」もしくは 「検査したがまだ見つからない程の小さな転移」 があれば手術でおおもとの乳腺腫瘍を切除してもその転移巣によって体はむしばまれてしまいます。
それほど腫瘍とは恐い病気です。
特徴について
腫瘍の特徴の一つにコントロール不能に陥った細胞の異常分裂があります。
異常な速度で分裂を繰り返し大きくなっていきます。
手術しないで置いておくと、その異常増殖に伴い腫瘍の表面が自潰(じかい)することがあります。
自潰とは組織が壊死し、その表面が破れることを言います。
自潰すると痛くて、時には感染を起こし悪臭を放つことがあります。
自潰による傷は、飲み薬や塗り薬、消毒などしてもなかなか閉じません。
良性と悪性について
先ほど猫ちゃんの乳腺腫瘍のほとんどが悪性と言いましたが、犬の場合は50:50で良性:悪性です。
良性でもこの自潰を起こすことがあります。しかし良性の腫瘍は転移を起こすことはありません。
自潰を起こさせないためにも完治を目指すためにも手術が最適の治療法です。
手術で切除した乳腺は病理組織検査を受け、ほんとうに腫瘍であるのかどうか?、腫瘍であるならどのような腫瘍か?良性か悪性か?などを診断されます。
今回の猫ちゃんの場合もデータ通りやはり残念ながら悪性の乳腺腫瘍でした。
幸い術後経過は良く2週間ほどで抜糸も済み元気にしてくれています。
猫の乳腺腫瘍②
乳腺腫瘍の発生率と避妊手術を受けた時期
猫
避妊手術(卵巣子宮摘出術)を生後①6か月以前、②7~12か月、③13~24か月 に受けた猫ちゃんたちは、
それぞれ、①9%、②14%、③89% の乳腺腫瘍の発生率であった。
(Overley,B.,et al.2005)
犬
避妊手術(卵巣子宮摘出術)を①初回発情以前、②2回目の発情以前、③2回目の発情以降に受けたワンちゃん達は、
それぞれ、①0.05%、②8%、③26%の乳腺腫瘍の発生率であった。
猫も犬も『発育の早い段階で避妊手術を受けておくと、乳腺腫瘍になりづらい。』ということです。
あまり早すぎる時期(生後3~4か月頃)に避妊手術をすると、関節の成長に悪影響する叫びとの報告もあります。
西長堀動物病院としては、避妊手術をする時期としては6か月前後が一つの目安としております。
※避妊手術は義務ではなく、「子供を産ませたい」や「うちの子はかわいそうだからしたくない」など考え方は人それそれなので、どうしたら良いか迷っている飼い主さまはご相談ください。
泌尿器疾患
腎不全
腎不全とは
腎機能の低下に伴い高窒素血症を来たす病態。
分類
病期による分類
1.急性腎不全:急激な腎機能の低下あるいは廃絶に伴い、血中の尿毒素の濃度が急上昇することを特徴とする病態。
2.慢性腎不全:3か月以上存在する腎蔵のダメージ
機序による分類
腎前性腎不全:腎臓への血流量低下(心不全・出血・ショック症状etcによる血圧・循環量の低下)
腎性腎不全:腎臓そのものの病気(腎実質)(腫瘍・中毒etc)
腎後性腎不全:尿管閉塞・尿道閉塞・腫瘍etc、膀胱破裂・尿道裂傷(交通事故・落下・重度な外傷)etc
検査・診断
1.血液検査
BUN(血液尿素窒素)、CRE(クレアチニン)、IP(リン酸)、Ca(カルシウム)、ALB(アルブミン)。
2.尿検査
尿比重
3.超音波検査
腎臓内の構造を確認します。
主に腎性腎不全なのか腎後性腎不全なのかの鑑別に役立ちます。
慢性腎不全
すくなくとも3か月以上存在する腎蔵のダメージ。
腎機能が低下し慢性的に機能不全に陥った病態です。
腎機能の75%以上がうまく働かなくなって初めて血液検査に異常が出始めます。
それ以前の異常は尿検査で発見される事があります。
高齢の猫が陥りやすい病態です。
ステージ | 血漿クレアチニン(mg/dL) | ||
---|---|---|---|
猫 | 犬 | ||
1 | <1.6 | <1.4 | 非窒素血症 |
2 | 1.6〜2.8 | 1.4〜2.0 | 軽度窒素血症 |
3 | 2.9〜5.0 | 2.1〜5.0 | 中等度窒素血症 |
4 | >5.0 | >5.0 | 重度窒素血症 |
原因
特定困難の事も多いです。老齢性・感染症・炎症・腎腫瘍などが原因です。
症状
初期症状は多飲多尿です。
その後、症状が進み尿毒症になると元気・食欲の低下・嘔吐・削痩などの症状が出てくる事があり、貧血を伴う事もあります。
治療
治るものではありません。したがって、進行を抑える事が治療の目的です。
食事療法
タンパク質・リン・ナトリウムを制限したフードを与える。
皮下補液
定期的に行います。※状態によっては自宅で行う事も可能です。
薬物療法
PGI2誘導体製剤、ACE阻害剤、薬用炭(吸着剤)など
定期的な血液検査を行うと腎不全の治療がうまくいっているか把握する事ができます。
尿管ステント設置術
尿管ステント設置術とは
腎後性腎不全の一つである尿管閉塞を開通させる為の手術。猫で多い手術です。
手術手技
尿管の閉塞部位を解除して、尿管に専用の尿管ステントを留置します。
尿管の閉塞部位が解除できない場合は、尿管を途中で切断して直接膀胱に縫合した上で再閉塞予防に尿管ステントを留置します。
使用ステント
猫の尿管の内径(1mm前後)はとても細い為、尿管ステント(外径0.73~0.86mm)は更に細く作られています。
尿管ステントは、体の拒絶反応が起きにくく作られています。