当院では最先端の医療機器を取り入れて整形外科に力を入れています。
症例紹介
- 画像診断はすべて全身麻酔下での検査です。
- 鑑別診断や病状の把握の精度はMRI・CT撮影がベストです。手術が必要な患者さんは当院に入院後、MRI・CT撮影施設に移動して検査を行います。
- 当院内でできる検査は脊髄造影レントゲン撮影検査です。経済的な理由、もしくは飼い主様のご希望でMRI・CT撮影をしない場合に手術に先駆けて行う検査が脊髄造影レントゲン検査です。(診断率90%以上)
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斜め外側から
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靭帯をめくって膝蓋骨と滑車溝を露出させたところ
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- 運動管理、体型管理
- 消炎鎮痛剤
- サプリメント
- 造溝術
- 外側関節包縫縮
- 頚骨粗面転移術
- 骨切り矯正術
- 運動管理、体型管理
- 消炎鎮痛剤
- サプリメント
- 大腿骨頭切除術(切除関節形成術)
- 三点骨切り術
- 股関節全置換術

神経疾患
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは
背骨(椎骨)と背骨(椎骨)の間の椎間板物質が突出(ヘルニア)を起こし、脊髄が圧迫されて痛みや麻痺(ふらつき、下半身不随、排尿障害など)が起こる病気です。
胸腰椎での椎間板ヘルニアの重症度分類
| グレード | 症状 | 内科療法 | 手術 |
|---|---|---|---|
| 1 | 腰の痛み、小さな段差でもつまずく・越えたがらない。 | ◎ | ◎ |
| 2 | 歩行可能、ふらつく、姿勢反応の低下 | ◎ | ◎ |
| 3 | 歩行不能、随意運動(+) | 〇 | ◎ |
| 4 | 歩行不能、随意運動(-)、深部痛覚(+) | × | ◎ |
| 5 | 歩行不能、随意運動(-)、深部痛覚(-) | × | 〇 |
| 脊髄軟化症 | 脊髄の麻痺の範囲が徐々に広がり死に至ります。罹患率:グレード5のうちの7% | × | × |
※随意運動(+/-)というのは自分の意志で後ろ足を動かせるかどうかのことです。
グレード1・2は「内科療法」を試みます。
内科療法
絶対安静が基本。
注射や飲み薬では突き出てしまった椎間板物質を取り除くことはできません。
注射や飲み薬は、痛みと脊髄周辺の炎症を抑える為に消炎鎮痛剤などを使います。
※もしグレード1や2であっても、腰の痛みがひどいなど内科療法が奏功しない場合は手術の対象となることもあります。
グレード3・4・5は「手術」の適応です。
※グレード3・4・5では、一生歩けなくなるリスクを考えると基本的には手術が奨められます。
手術
さまざまな手術方法があります。当院では片側椎弓切除術をおこなっております。
片側椎弓切除術
背骨の一部にマイクロエンジンを用いて穴を開けて、その穴から突き出てしまった椎間板物質を取り除く手術方法です。(写真参照)

手術に先立って椎間板ヘルニアの確定診断と場所の特定のための検査が必要です。
検査
神経学的検査:皮膚や足の感覚や反射、脳神経の異常などがないか精査します。診断をすすめていく上で非常に重要な検査です。
画像診断:

脊髄造影レントゲン撮影
CT撮影
MRI撮影
神経学的検査と画像診断をあわせて、「椎間板ヘルニアであるかどうか?」、「グレードがいくつであるか?」「どの背骨とどの背骨の間のヘルニアなのか?」を特定して手術に臨みます。
整形疾患
骨折
動物の骨折
動物の骨折では人のように患部を動かさずにおとなしくしていることは不可能なので、手術が必要なものがほとんどです。
骨折の治療・手術方法
骨折した部位や折れ方によって選択する手術法は異なります。
プレート固定法
骨折してずれってしまった骨を元の位置に戻し、医療用の金属製のプレートとスクリューで骨と骨を固定する方法です。

ずれてしまった骨を直接見てしっかりと元の位置に戻し強固に固定することができるのがメリットです。
創外固定法
メスを使って切り開くというのを最小限にとどめ、皮膚の外からピンを骨に捻じ込んで固定する方法です。

粉砕骨折や元の位置に戻せない骨折に適しています。
直接骨折の部位をいじらずに済むので、骨を修復するため必要な細胞や血行を維持したまま治せます。
早く治癒できるのがメリットです。
髄内ピン
骨の中心には骨髄といわれるドロドロの液体を満たした空洞があります。
その骨髄内に金属性のピンを入れる方法です。
骨髄ピン単独では不足なので他の固定法の補助として使われることが多い方法です。(ちょうど上の左から2番目のレントゲン写真では創外固定の補助として使用されています。)
膝蓋骨内方脱臼
膝蓋骨内方脱臼とは
膝蓋骨(一般的に『膝のお皿』と言われている骨)が内側に脱臼する病気。
軽度から重度なものまであり、グレードⅠ~Ⅳまでに分類される。
小型犬によく見られる病気。(教科書的にはどの犬種にもまんべんなく起こる病気となっています。都市部で診察している当院では大型犬の絶対数が少ないせいか小型犬でこの病気をよく診断します。)
生まれつき膝蓋骨を内側に引っ張る筋肉の力が強くかかってしまっているのが原因と言われている。
重症例では生まれた直後から、生後6か月~12か月頃まで急激に進行することがある。

膝蓋骨内方脱臼のレントゲン(右後肢)
①矢印が膝蓋骨
②本来ならこれが骨の中央に乗っていないといけません
③膝蓋骨が内側(写真では右側)にはずれているのが分かります
正常な膝の構造(模型)
膝蓋骨内方脱臼の症状
患肢の拳上(3本足で歩く)
重度になると明らかな内股になる
将来の膝関節の炎症につながり易い。(前十字靭帯断裂や損傷、半月板損傷)
Singletonの分類法
| グレード | |
|---|---|
| Ⅰ | 膝関節の伸展時に獣医が指で膝蓋骨を脱臼させることができるが、指を離すとすぐ滑車溝内に戻る。 |
| Ⅱ | 膝関節の伸展時に獣医が指で膝蓋骨を容易に脱臼させることができ、指を離してもすぐには滑車溝内に戻らない。頚骨を内転・外転させると容易に膝蓋骨を脱臼・整復できる場合が多い。 |
| Ⅲ | 膝蓋骨は常に脱臼しており、獣医が指で整復が可能であるが、指を離すとすぐにまた脱臼してしまう。 |
| Ⅳ | 膝蓋骨は常に脱臼しており、獣医が指で滑車溝内に整復するのが不可能である。頚骨の捻れ(ねじれ)など、骨格に形態学的な異常の認められる場合がある。重症例では膝関節の伸展機構が破綻(はたん)しており、膝関節を自力で伸展する事ができない。 |
難しくてよく分かりづらいという方はブログ</a >も参考にしてください。
膝蓋骨内方脱臼の治療
内科的治療…グレードⅠ、Ⅱの症例に有効とする報告がある。
外科的治療…基本的にグレードⅢ、Ⅳの症例に適応となる。
※太字…当院で行える治療
股関節形成不全
股関節形成不全とは
成長期の犬に発症する股関節の亜脱臼( しっかりと噛みあっていなくかなり緩い関節の状態 )あるいは 完全脱臼を特徴とする疾患。
軽度から重度の関節炎が発症する。
症状が出始める時期は、仔犬の頃(5~10か月)と5歳以降の成犬が多い。
症状は慢性で進行性である。

股関節形成不全に起因する関節炎のレントゲン像
①寛骨臼(骨盤側の関節の受け皿)
②大腿骨頭(太ももの骨の関節の頭)
③大腿骨頚(太ももの骨の関節の首)
の重度の変形
股関節形成不全の症状
軽度から重度の痛み⇒びっこ、散歩を途中で嫌がる、上る動作を嫌がる、モンローウォーク(お尻を振って歩く)
突然の股関節完全脱臼。
股関節形成不全の治療
内科的治療…約60%の症例に有効とする報告がある。
外科的治療…内科的治療を行っても良好な反応が得られない場合。
※太字…当院で行える治療


